第二回泊まり込み製作 大雪編 | |
戻る 戻る | 「万障繰り合わせて」という言葉がありますが、二度目の泊まり込み製作がまさにこれでありました。 まずは中央線と市民バスを乗り継いで農場へ行くには、日・祝のみ運行のバスを使うしかないことがわかりまし た。まるで引き潮の時だけ歩いて渡れる島のようですね。車がない者にとっては、まさに陸の孤島です。 では次回は14日の成人の日に行こうという予定でしたが、皆様ご存じのあの大雪の日。東京でもかなり積もった と聞きますが、工房のある富士見では30㎝にのぼる積雪でした。
実はわたくしピクシーは寒いのは苦手でして。こんな日は家の中でぬくぬくしていたいのであります。しかし 店主は行く気満々!だったら今日は止めて、明日タクシーで行きましょうと言いましたら、「お金を払えば総て 解決できると思うのが現代人の不幸だ…」などと申します。わたくしをつかまえて「現代人」だなんて!まるで 前時代の妖精みたいな言い草です。こう言われちゃあ行くしかありません!5日分の食料を背負っていざ出発。 しかし長靴も埋まるほどの雪です。電車も遅れ気味。数分差でなんとかぎりぎりバスに乗れました。客といっては 私たちだけの小さなバスが、雪深い山道を走っていくと、まるで遠くへ旅行にでも来た気分。
終点でバスを降りて歩き始めます。時に大きな牡丹雪が降ってきて、人も通らぬ農道をずぼっずぼっと新雪を 踏んで進みます。見渡す限り人っ子一人見えない状態。ここで何かあったら遭難間違いなし!ヒイヒイ言いながら 歩きつつ、抱えた食料は一つとして手放そうとしないわたくしもわたくしです。いつもの倍の時間がかかったもの の、なんとか農場のログハウスが見えた時の嬉しかったこと。本当にシャレにならない旅でした。 やっとたどり着き、暖炉に火を起こしてほっと一息。ふと窓の外を見ると、あれほど降りしきっていた雪がぱっ たりと止んでいました…。その後トイレのタンクへの給水管が凍結して、使う度に水を汲んでタンクを満たさなけ ればならないことがわかりましたが、この程度のトラブルはこの冷え込みを考えれば当然といえるでしょう。 さあ、気を取り直してわたくしはいそいそと料理にいそしみます。今夜のメニューはポトフです。暖炉でことこ と煮込んだポトフの温まること!今日一日のドタバタはこの至福の為にあったのだ、なんて言っていたら一難去っ てまた一難。さっきまで確かに出ていた水が出ない…。原因不明のまま雨水タンクの水を貯めたり、雪を溶かした りして一騒動。
翌朝わかったことは地下水を汲み上げる給水ポンプの電源が、雪の重みで抜けてしまったという単純な原因でし た。しかしこんなことは今まで一度もなかったとのこと。いやはやいったい何なのでしょう?これほど色々あると 勘ぐりたくもなりますが、ふと見ると一心不乱に製作に打ち込む店主の姿が。
とにかく彫り続けたい。困難に見舞われるほどに雑念が抜けて、やりたいという気持ちだけがはっきりしてくる。 恐怖を捨ててひたすらに突き進め!ってことかな?と思いつつ、湯たんぽ作りにいそしむお気楽なわたくしであり ます。 翌朝は快晴。一面の銀世界に美しい山々が映えます。一つ何かを乗り切ったような、不思議な充実感を持って、 今日も一日作業に励みます。
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