伝承地の現地調査 |
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こんにちは!ピクシーです。 ここ諏訪郡富士見町周辺の民話や伝説と、ヨーロッパの共通点をテーマに毎月連載している版画工房フェンリル通信 については、以前このコーナーでもお伝えしましたが、今日は通信で取り上げる伝承をどのように調べていくのかを レポートします。 地元の伝承とはいえ、今ではほとんど知られていないのが実情です。数少ない資料をもとに現地調査へ行くわけです が・・・あの~本当にこの古い毛筆地図を頼りに行くのですか?
この遠近感のない地図だと、よくよく見なくてはどの地域の地図かもわかりません。これと現代の地図とをじっくり と見比べて、だいたいの見当をつけ、あとは行き当たりばったりという戦法のようです。こんな風に伝承の舞台となっ た場所を、昔の地図を頼りに探してみるわけですが、現地に行っても解説の看板があるわけでもなく、人に道を尋ねて もそんな話は知らないと、いぶかしがられることもあります。それでは具体的にどんな風に調査しているのか、ある日 の調査を密着取材してみましょう。
以前、田中神社に調査へ行った際は味噌など塗っていなかったのに、まさかあのお地蔵さまも‘味噌舐め地蔵’だった とは!と店主が驚いております。‘味噌嘗め地蔵’とは、自分の身体の痛い所とお地蔵さまの身体の同じ場所に味噌を 塗ると痛みが治る、という風習です。店主がこの風習に興味があることを知っていた知人が、親切にもわざわざ電話を くださったのでした。 今日は田中神社のお祭りで、虎舞いもあるし、ふるまいも出るから、よかったら見に来ませんか?との知人のお誘い に、店主は「虎舞いですか!!」と電話に喰いつかんばかりに大声を出しています。長坂にある郷土資料館には珍しい 虎のお面が展示されています。獅子舞いならぬ虎舞いの為のお面で、田中神社のお祭りでその舞いがある、ということ を知っていた店主でしたが、そのお祭りの日程がわからなかったのです。まさか、ちょうどその日にお誘いを受けると は!これは行ってみるしかありますまい。普段は出不精の店主が、すたこらさっさと出かけて行きます。
子供の頭が良くなりますようにと、頭に塗る方が多いのだとか。時代も変わりましたね。
しが貴重なんですよね。あれ?解説のメモでもとっているかと思いきや、店主はふるまいのフランクフルトにかじりつ いております。本人曰く、徳川家等の体制にまつわる公けの歴史より、もっと民衆に近い文化に興味があるのだとか。 なにやら格好つけてますが、結局教科書的歴史に疎いだけかもしれませんよ。さあ、いよいよ虎舞いが始まりました。
本当に虎ですね!一度は衰退してしまったそうですが、保存会によって復元されたのだそうです。とても表情豊かな 素晴らしい舞いでありました。しかし、なぜ獅子ではなく虎なのでしょうか?なにせ虎舞いは全国でも大変珍しいもの だとか。一節では火事の多い地域で火伏せの為に行なわれたといわれているそうです。 店主はいつのまにかお祭りの世話役をされている年配のご婦人とお話ししているようです。なぜ虎なのでしょうかと の店主の質問に、この地域は昔から水害が多かったので、それから守ってもらうために虎の強い力が必要だったので しょう、というお言葉。店主は先ほどフランクフルトを食べながら解説を聞いていた時とは打って変わって、とても興 味深げにご婦人にあれこれと質問しています。火伏せと水害除け、この微妙な食い違いに店主は興奮している模様で す。曰く、その土地で生活している人々の感覚というのは、たとえ歴史として不確かでも、多くの重要な情報を含んで いる、ということのようです。 その日仕入れた情報をもとに、再び文献にあたり、それから突飛で勝手な解釈をして仮説を立てていきます。結局 綿密な調査とは程遠い、偶然による行き当たりばったりの調査といえそうです。これらが2015年の5月から連載さ せていただいている、住宅情報誌「ふるさとネットワーク」のルーラルレポート11月号のネタになっております。
今回のエッセイは、題して「フランスの田舎暮らし」。しかし店主はフランスへ行ったことはございませんのであし からず。このように‘歴史的’には正しくない情報も含まれておりますので、取扱いにはくれぐれもご注意くださいま せ。 |
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