WATER FAERY |
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以前、箱根にある精進池という所へ行きました。やけに大気が 澄みきって、木の葉の一枚一枚までもが手に触れられそうなほど はっきりと見える冬のある日。池はこの世のものとは思われない 不思議な気配を漂わせていました。あきらかに、池の岸辺から向 こうは、こちら側とは違った空気に包まれており、昼間だという のに、たそがれの光が注いでいるのです。 池のほとりを歩いてみると、そこには八百比丘尼(やおびくに) のお墓がありました。八百比丘尼とは、人魚の肉を食べたばかり に老いることがなく、八百年生きた女性です。知人たちは皆いな くなるのに、一人だけ取り残されて生きていかなければならなか った女性。比丘尼のお墓がなぜこんな所にあるのでしょう?私に は、比丘尼の思いがこの池の主となって、今でも息づいているよ うな気がしました。 ウォーターフェアリーは、負の感情にとらわれている人間を惑 わし、魂を奪う水の妖精です。精進池のほとりに立った時、心を 此岸にしっかりとつなぎとめておかなくては、ややもすると池の 向こうの彼岸へと引き寄せられてしまいそうな錯覚に陥りました。 ウォーターフェアリーとは、もしかするとこんなものなのでしょ うか? |
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