ホワイト・レディー







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 ドイツの麦畑には「白い女」や「ライ麦ばあさん」などと呼ばれる

穀物を守護する精霊がいます。

 この精霊は不用意に畑の中に入った子供を、恐い目に遭わせると云

います。

 こういった穀物の精霊は、収穫時の最後に残った麦の束に宿ると云

われ、人々はこの最後の束で「穀物の女王」と名付けた人形を作り、

神輿のように担ぎ回した後に燃やします。その残った灰を畑に撒くこ

とで、来年の豊作がもたらされるのです。

 

 我が家の田んぼでも、収穫時に種もみ用の稲束に目印を付けて最後

まで刈らないでおきます。

 一つ一つの稲束を全て手作業で刈り取っていくと、稲の穂の中に

宿っている穀物霊たちが、まだ残っている稲束の方へと逃げ出すよう

な気がしてくるのです。やがて目印を付けた最後の稲束だけが残る

と、田んぼ一面にいた穀物霊たちが、まさにこの一束に集まっている

気配がします。

 この一束は来年の種もみ用ですので、ドイツの風習のように燃やさ

ず、大切に保存しておきます。

 我が工房には冬の間「白い女」たちが、他の妖精たちの仲間に加

わるというわけです。

                 

こ のHPの文章と画像の著作権は総て製作者に帰属します。© Jiro Ota

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